歯列矯正治療のゴールは、単に歯並びが美しく整うことだけではありません。その美しい歯並びを支える健康な歯茎があってこそ、真の意味での治療成功と言えるでしょう。矯正治療期間中は、装置の存在によってプラークコントロールが難しくなり、歯肉炎のリスクが高まります。もし、歯肉炎を放置したまま治療を進めてしまうと、歯茎が腫れたり、出血したりするだけでなく、歯周病へと進行し、歯を支える骨が失われてしまう可能性さえあります。そうなると、せっかく歯並びが綺麗になっても、歯茎が下がって歯の根が露出してしまったり、歯がグラグラしてしまったりと、審美的にも機能的にも問題が生じかねません。そのため、矯正治療を開始する前から、そして治療期間中を通して、歯周組織の健康管理は非常に重要です。治療開始前に歯肉炎や歯周病がある場合は、まずそれらの治療を優先し、歯茎の状態を安定させてから矯正治療をスタートすることが一般的です。そして、治療期間中は、歯科医師や歯科衛生士の指導のもと、正しいブラッシング方法を習得し、歯間ブラシやタフトブラシ、デンタルフロスなどの補助清掃用具を効果的に活用して、日々のプラークコントロールを徹底することが求められます。また、定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケア(クリーニングや歯石除去)も欠かせません。これにより、自分では落としきれないプラークや歯石を除去し、歯肉炎の予防・改善を図ります。万が一、治療中に歯肉炎の兆候が見られた場合は、早期に歯科医師に相談し、適切な対応をしてもらうことが大切です。矯正治療は、患者さんと歯科医療チームとの二人三脚です。美しい歯並びというゴールを目指す道のりにおいて、健康な歯茎を維持するための努力を怠らなければ、治療終了時には、自信に満ちた笑顔と共に、生涯にわたって機能する健康な口腔環境も手に入れることができるはずです。歯列矯正のゴールを、健康な歯茎と共に輝く笑顔で迎えましょう。