歯列矯正は、美しい歯並びと機能的な噛み合わせを実現するための素晴らしい治療ですが、治療期間中は口腔内の環境が変化しやすく、特に歯茎のトラブルには注意が必要です。歯茎が下がってしまう「歯肉退縮」は、見た目の問題だけでなく、知覚過敏や歯周病のリスクを高めるため、できる限りの予防策を講じたいものです。矯正中の歯茎下がりを防ぐために最も重要なのは、日々の丁寧なプラークコントロールです。矯正装置の周りは食べかすやプラークが溜まりやすく、通常の歯磨きだけでは清掃が不十分になりがちです。歯ブラシは、ヘッドが小さく毛先が細いものを選び、歯と装置の間、ワイヤーの下など、細かい部分まで意識して磨くことが大切です。力を入れすぎると歯茎を傷つけてしまうため、優しい力で小刻みに動かすようにしましょう。歯間ブラシやデンタルフロス、タフトブラシといった補助的な清掃用具の活用も不可欠です。特に歯と歯の間や、装置が複雑に入り組んでいる部分は、これらの道具を使わないと汚れを落としきれません。歯科医師や歯科衛生士に正しい使い方を教えてもらい、毎日の習慣にすることが理想的です。また、定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアも欠かせません。自分では落としきれないプラークや歯石を専門的に除去してもらうことで、歯周病を予防し、歯肉退縮のリスクを低減できます。歯科医師は歯茎の状態もチェックしてくれるので、万が一退縮の兆候が見られても早期発見・早期対応が可能です。食生活においては、糖分の多い飲食物の摂取回数を減らすことも、虫歯や歯周病の予防に繋がります。喫煙は歯周組織の血流を悪化させ、歯肉退縮のリスクを高めるため、矯正治療を機に禁煙を考えるのも良いでしょう。歯列矯正は自己管理が治療結果を大きく左右します。日々の丁寧なケアと定期的な専門家のチェックを怠らず、健康な歯茎を維持しながら、理想の歯並びを目指しましょう。