歯列矯正でIPR(歯を削る処置)を受けた後、「歯を削ってしまったけれど、何か特別なケアは必要?」「虫歯になりやすくなったりしない?」といった不安を感じる方もいるでしょう。IPRは安全な処置ですが、処置後の口内環境は以前と少しだけ変化します。その変化に対応した適切なセルフケアを習慣にすることが、トラブルを防ぎ、健康な口内を維持するために非常に重要です。まず、IPR後に一部の人が経験するのが、一時的な「知覚過敏」です。歯の表面のエナメル質がわずかに薄くなることで、冷たいものや熱いものがしみやすくなることがあります。これは通常、数日から数週間で、唾液に含まれるミネラルが歯の表面を再石灰化することで自然に治まっていきます。もし症状が気になる場合は、シュミテクトなどの「知覚過敏用の歯磨き粉」を使用するのが効果的です。硝酸カリウムといった成分が、神経への刺激をブロックし、しみる症状を和らげてくれます。次に、最も意識すべきなのが「清掃性の変化」です。IPRを行うと、本来丸みを帯びていた歯と歯の間の接触点が、平らな面に変わります。この平らな面には、食べカスやプラーク(歯垢)が付着しやすくなるため、これまで以上に丁寧なケアが求められます。特に重要なのが「デンタルフロス」の使用です。歯ブラシだけでは、この歯と歯の間の平らな面の汚れを完全に取り除くことはできません。毎日の歯磨きの際に、必ずデンタルフロスを歯の側面に沿わせるようにして通し、プラークをかき出す習慣をつけましょう。これは、IPRを行った部分の虫歯(隣接面カリエス)を防ぐ上で、最も効果的な方法です。さらに、フッ素の活用も推奨されます。フッ素には、歯質を強化し、再石灰化を促進する効果があります。毎日の歯磨きでフッ素配合の歯磨き粉を使用するのはもちろんのこと、定期的に歯科医院で高濃度のフッ素を塗布してもらうと、さらに虫歯予防効果が高まります。IPR後の口内は、少しだけデリケートになっています。その変化を理解し、正しいケアを実践することが、あなたの歯を生涯にわたって健康に保つための鍵となるのです。