「歯列矯正を始めたら痩せた」という話を耳にすることがあります。実際に、矯正治療中に体重が減少する人は少なくありません。しかし、歯列矯正自体が直接的なダイエット効果を持つわけではありません。では、なぜ痩せるという現象が起こるのでしょうか。その主な理由として考えられるのは、食事内容や食習慣の変化です。まず、矯正装置を装着すると、特に治療初期や調整直後は、歯が動くことによる痛みや違和感、あるいは装置が口の中に当たることで、硬いものや噛み応えのあるものが食べにくくなることがあります。その結果、自然と柔らかいものや細かく刻んだもの、流動食に近いものを選ぶようになり、摂取カロリーが以前より減少する可能性があります。また、矯正装置の間に食べ物が挟まりやすいため、間食を控えたり、だらだら食べをしなくなったりする人もいます。これも総摂取カロリーの減少に繋がり得ます。さらに、マウスピース型矯正装置を使用している場合は、食事のたびに装置を取り外し、食後に歯磨きをしてから再度装着するという手間があるため、面倒に感じて間食の回数が減るというケースも考えられます。心理的な要因も影響しているかもしれません。矯正治療は「綺麗になりたい」「健康になりたい」という美意識や健康意識の高まりから始める人が多く、その意識が食生活の見直しや適度な運動習慣にも繋がり、結果として体重減少に結びつくこともあります。ただし、これらの変化は一時的なものであることが多く、装置に慣れてきたり、痛みが和らいだりすると、徐々に元の食生活に戻り、体重も安定してくるのが一般的です。大切なのは、矯正治療中に極端な食事制限をするのではなく、栄養バランスの取れた食事を心がけることです。もし体重減少が著しい場合や、体調に不安を感じる場合は、自己判断せずに歯科医師や医師に相談するようにしましょう。