歯列矯正を始めてしばらく経つと、「なんだか歯が長くなったように見える」「歯茎が痩せてきた気がする」といった不安を感じる方がいらっしゃるかもしれません。特に下の前歯などでそう感じることが多いようです。鏡を見るたびに気になり、このまま歯茎がどんどん下がってしまうのではないかと心配になるお気持ちはよく分かります。まず、歯が動く過程で一時的にそう見えることがある、という可能性を考えてみましょう。歯並びが整うにつれて、これまで重なって隠れていた部分が見えてきたり、歯の傾きが変わったりすることで、相対的に歯が長く見えることがあります。これは必ずしも歯茎が実際に下がったことを意味するわけではありません。しかし、実際に歯肉退縮が起きている可能性も否定できません。歯肉退縮とは、歯茎のラインが下がり、歯の根っこに近い部分が露出してくる状態のことです。もし、歯が長くなったように見えるだけでなく、冷たいものがしみやすくなった、歯と歯の間に隙間ができてきた、歯茎の色が赤っぽく腫れている、といった症状も伴う場合は、歯肉退縮が進行しているサインかもしれません。このような変化に気づいたら、自己判断せずに、まずはかかりつけの矯正歯科医に相談することが最も大切です。歯科医師は専門的な診察を通じて、それが一時的な見た目の変化なのか、あるいは本当に歯肉退縮が起きているのかを判断し、原因を特定してくれます。もし歯肉退縮が確認された場合でも、早期であれば適切な対処によって進行を遅らせたり、症状を改善したりすることが可能です。例えば、ブラッシング方法の見直し、専門的なクリーニング、場合によっては歯周治療などが提案されるでしょう。不安を一人で抱え込まず、専門家である歯科医師に現状を正確に伝え、指示を仰ぐことが、問題を深刻化させないための最善の方法です。そして、治療期間中は特に口腔ケアを丁寧に行い、定期的なチェックアップを欠かさないように心がけましょう。