歯列矯正におけるIPR(歯を削る処置)は、どんな歯並びにも適用される万能な方法ではありません。その効果を最大限に発揮できる、いわば「得意な症例」が存在します。ご自身の歯並びがIPRの対象となる可能性があるのかを知ることは、治療法を検討する上で非常に参考になります。IPRが最も頻繁に用いられるのが、「軽度から中程度の叢生(そうせい)」、つまり歯のがたつきです。顎の大きさと歯の大きさのアンバランスが原因で、歯が並ぶためのスペースが「あと少しだけ足りない」というケースです。具体的には、不足しているスペースが全体で4〜5mm程度までの場合に、IPRは非常に有効な選択肢となります。それぞれの歯の間を0.2〜0.5mmずつ削ることで、抜歯をすることなく、この不足分を補い、歯をきれいに一列に並べることが可能になります。次に、IPRがその真価を発揮するのが、「ブラックトライアングル」の予防と改善です。ブラックトライアングルとは、歯列矯正で歯が綺麗に並んだ後に、歯と歯と歯茎の間にできてしまう、黒い三角形の隙間のことです。これは、もともとの歯の形が三角形に近い(特に下の前歯に多い)ことや、加齢・歯周病で歯茎が下がっていることが原因で生じます。この審美的な問題を解決するために、IPRは絶大な効果を発揮します。歯の側面を削って、三角形だった歯の形をより四角形に近い形に修正することで、歯同士が根元に近い部分でぴったりと接触するようになり、気になる隙間を埋めることができるのです。これは、矯正治療の最終段階で、仕上がりをより美しくするために行われることもあります。その他にも、上下の歯の大きさのバランスが悪い場合(例えば、上の歯に比べて下の歯が大きすぎるなど)に、歯のサイズを微調整して噛み合わせを整える目的でIPRが用いられることもあります。もしあなたの悩みが、これらのケースに当てはまるのであれば、IPRはあなたの矯正治療において、非常に重要な役割を果たすことになるかもしれません。
あなたは対象?歯を削るIPRが有効な歯並びとは