歯列矯正中の社会人にとって、避けては通れないのが、職場や取引先との「飲み会」や「会食」の席です。装置に食べ物が挟まったり、痛くて食べられなかったり、周りに気を使わせてしまうのではないか…。そんな不安から、せっかくのコミュニケーションの機会を憂鬱に感じてしまう人もいるかもしれません。しかし、少しの工夫と心構えで、これらの悩みは十分に乗り越えることができます。まず、お店選びの段階で、可能であれば少しだけ配慮をリクエストしてみましょう。焼き鳥やステーキのように、硬くて噛み切るのが難しいメニューが中心のお店よりは、お刺身や煮物、豆腐料理、リゾットやパスタなど、柔らかいメニューが豊富な和食店やイタリアンなどを提案してみるのも一つの手です。会食の幹事を任された場合は、絶好のチャンスと言えます。飲み会が始まってからは、「今、矯正中で、硬いものが食べにくくて…」と、最初に軽く周囲に伝えておくと、余計な気遣いをさせずに済みます。メニューを選ぶ際には、無理せず自分が食べられるものを選びましょう。例えば、唐揚げは衣が硬くて難しいかもしれませんが、だし巻き卵なら問題なく食べられます。骨付きの肉は避け、細かくほぐされた魚料理を選ぶ、といった工夫が有効です。そして、食後に最も気になるのが、装置に挟まった食べ物のカスです。会話の途中で席を立ち、お手洗いで口をゆすいだり、歯間ブラシなどで簡単にケアしたりするだけで、不快感は大きく軽減されます。小さな手鏡と歯磨きセットを常に携帯しておくことは、矯正中の社会人の必須マナーです。マウスピース矯正の場合は、会食の前に外しておくことができますが、その後の二次会などで装着時間が短くなりすぎないように注意が必要です。矯正中の食事は、確かに制限があります。しかし、それは「何も食べられない」ということではありません。食べられるものを探し、工夫して楽しむ姿勢を見せることで、あなたのポジティブな人柄が伝わり、かえって周囲との良好な関係を築くきっかけになるかもしれません。