鏡を見るたびに少しだけ気になる、歯のがたつきや口元の突出感。日常生活に大きな支障があるわけではないからと、あなたはその問題を「いつか治せばいい」と先延ばしにしていないでしょうか。しかし、歯並びの悪さ、すなわち「不正咬合」を放置することは、あなたが思っている以上に、多くのリスクを未来に先送りしているのと同じことなのです。審美的な問題は、もちろん大きな要素です。コンプレックスから人前で思い切り笑えなかったり、写真を撮られるのが嫌いになったりすることは、自己肯定感を少しずつ蝕んでいきます。しかし、問題はそれだけにとどまりません。不正咬合の放置がもたらす最大のリスクは、実は「健康」への影響です。歯が重なり合っている部分は、歯ブラシが届きにくく、プラーク(歯垢)の温床となります。これは、虫歯や歯周病の直接的な原因です。どんなに丁寧に歯を磨いているつもりでも、構造的に汚れやすい場所があれば、病気のリスクは常に高まります。将来、自分の歯を一本でも多く残したいと願うなら、このリスクは見過ごせません。また、噛み合わせの悪さは、食べ物を効率よく咀嚼できない「咀嚼機能の低下」を招きます。十分に噛み砕かれない食べ物は、胃腸に負担をかけ、消化不良の原因となることもあります。さらに、不安定な噛み合わせは、顎の関節に過度な負担をかける「顎関節症」を引き起こしたり、それに伴う原因不明の頭痛や肩こりに繋がったりするケースも少なくありません。あなたが今感じている体の不調は、もしかしたら歯並びの放置が原因なのかもしれないのです。そして、忘れてはならないのが、加齢による変化です。歯周病が進行したり、歯がすり減ったりすることで、若い頃は気にならなかった歯並びが、年齢とともにより悪化していくことは珍しくありません。問題が複雑化すればするほど、将来的な治療はより困難になり、期間も費用も増大していきます。「いつか」と思っているその日は、永遠に来ないかもしれません。歯並びの問題は、放置しても自然に治ることは決してありません。むしろ、時間とともに静かに、しかし確実に、あなたの心と体の健康を脅かしていきます。未来の自分が後悔しないために、まずは専門家の話を聞いてみること。その小さな一歩が、あなたの人生をより豊かに、そして健やかにするための、最も重要な決断となるのです。
その歯並び、放置して大丈夫?未来を左右する決断