「もう年だから歯列矯正は無理だろう」と諦めていませんか?実は、歯や歯周組織が健康であれば、シニア世代、つまり60代、70代、あるいはそれ以上の方でも歯列矯正治療を受けることは十分に可能です。近年、「人生100年時代」と言われるようになり、健康寿命を延ばし、QOL(生活の質)を向上させたいと考えるシニア層が増えています。その中で、歯並びや噛み合わせの改善を目指して矯正治療を選択する方も少なくありません。シニア世代が歯列矯正を行うメリットは多岐にわたります。まず、「咀嚼機能の向上」です。年齢とともに歯を失ったり、噛み合わせが悪くなったりすると、食事が楽しめなくなり、栄養の偏りや消化不良を引き起こす可能性があります。矯正治療によってしっかりと噛めるようになれば、食事の幅が広がり、健康維持にも繋がります。次に、「口腔衛生状態の改善」です。歯並びが整うことで歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを軽減できます。特にシニア世代にとって、歯周病は歯を失う最大の原因であり、誤嚥性肺炎のリスクを高めることも知られています。口腔内を清潔に保つことは、全身の健康を守る上でも非常に重要です。また、「審美性の向上による心理的な効果」も大きいです。綺麗な歯並びは、若々しい印象を与え、笑顔に自信が持てるようになります。これにより、社会参加への意欲が高まったり、コミュニケーションが円滑になったりといったポジティブな変化が期待できます。さらに、入れ歯やブリッジ、インプラントなどの補綴治療を行う前に、残っている歯の歯並びや傾きを矯正治療で整えることで、より安定した質の高い補綴治療が可能になることもあります。ただし、シニア世代の矯正治療には、若い世代とは異なる注意点もあります。まず、歯周病が進行している場合は、徹底的な歯周病治療を行い、状態を安定させてから矯正治療を開始する必要があります。また、加齢に伴い骨の代謝が遅くなるため、歯の移動に時間がかかる傾向があります。無理な力を加えると歯根吸収や歯肉退縮のリスクが高まるため、より慎重な治療計画と丁寧な力のコントロールが求められます。全身疾患(糖尿病、骨粗しょう症など)をお持ちの場合は、その状態を考慮した上で治療を進める必要がありますし、服用している薬によっては歯の移動に影響が出ることもあります。
何歳まで可能?シニア世代の歯列矯正