歯列矯正治療中の食事は、装置の破損を防ぐだけでなく、歯肉炎のリスクを管理する上でも非常に重要な要素となります。矯正装置の周りには食べ物のカスが詰まりやすく、プラーク(細菌の塊)が付着しやすい環境です。特に、糖分の多い食べ物や飲み物は、プラーク中の細菌の栄養源となり、細菌の活動を活発化させ、歯肉炎を引き起こす酸や毒素を産生しやすくします。そのため、甘いお菓子やジュース、炭酸飲料などの摂取頻度が高いと、歯肉炎のリスクが上昇します。また、粘着性の高い食べ物、例えばキャラメルやガム、お餅などは、矯正装置に強力に付着しやすく、除去が困難なため、プラークが長時間停滞する原因となります。繊維質の少ない柔らかいパンや麺類なども、細かく砕けて装置の隙間に入り込みやすく、磨き残しの原因となり得ます。一方で、繊維質の多い野菜や果物は、よく噛むことで唾液の分泌を促し、お口の中の自浄作用を高める効果が期待できます。唾液には、細菌の増殖を抑えたり、酸を中和したりする働きがあるため、歯肉炎の予防に役立ちます。ただし、リンゴやニンジンなどの硬い野菜や果物を丸かじりすると、装置が外れたり破損したりする原因になることがあるため、小さく切ってから食べるなどの工夫が必要です。食事の後は、できるだけ早く歯磨きをすることが理想的です。もし、すぐに歯磨きができない状況であれば、水でよくうがいをするだけでも、食べ物のカスをある程度洗い流す効果があります。矯正治療中は、食事の内容や食べ方にも気を配り、食後の適切な口腔ケアを徹底することが、歯肉炎を予防し、健康な歯茎を維持しながら治療を成功させるための大切なポイントとなります。歯科医師や歯科衛生士から、食事に関する具体的なアドバイスを受けるのも良いでしょう。