今思えば、体は確かにサインを送ってくれていたのだと思います。四十代も半ばを過ぎ、疲れやすくなったのは歳のせいだとばかり思い込んでいました。最初の変化は、夜中にトイレで目が覚めるようになったことでした。それまでは朝までぐっすり眠れていたのに、一晩に二度、三度と起きるのが当たり前になりました。寝不足で日中の仕事に集中できず、ぼーっとすることも増えました。妻からは「またトイレ?何か悪いんじゃないの」と心配されましたが、私自身は「水を飲みすぎただけだろう」と軽く考えていたのです。しかし、その「水を飲む量」が異常だったことに、私は気づいていませんでした。会議中も、デスクワークの最中も、とにかく喉が渇いて仕方がないのです。手元には常にペットボトルのお茶を置いていましたが、飲んでも飲んでも渇きは癒えませんでした。頻繁に席を立ってトイレに行くものですから、同僚からも不審な目で見られていたかもしれません。そんな生活が数ヶ月続いたある日、会社の健康診断の結果が届きました。そこには「血糖値に異常あり、要精密検査」という厳しい文字が並んでいたのです。さすがに無視することはできず、私は重い腰を上げて内科クリニックの門を叩きました。医師に最近の症状、特に夜間の頻尿と異常な喉の渇きについて話すと、すぐに血液検査が行われました。そして後日、告げられた診断名は「二型糖尿病」でした。頭が真っ白になりましたが、同時にこれまでの不調の理由がすべて繋がった瞬間でもありました。あの夜中のトイレは、私の体が必死に発していたSOSだったのです。医師の説明によると、高血糖によって尿量が増え、その結果として脱水状態になり喉が渇くという、典型的な糖尿病の症状でした。もっと早く異変に気づいていれば、という後悔がないわけではありません。しかし、あの不快な頻尿があったからこそ、私は病院へ行く決心をし、病気を発見することができました。今、私は食事療法と運動で血糖コントロールに励んでいます。体の小さな変化を見過ごさないこと。それが、自分の健康を守る上でいかに重要かを、私は身をもって学んだのです。
私が糖尿病に気づいたのは夜中のトイレから