「少しでも早く歯列矯正を終わらせたい」というのは、治療を受ける多くの方が抱く切実な願いでしょう。インターネット上では、矯正期間を短縮できるとされる様々な情報が見受けられますが、その効果や安全性については慎重な判断が必要です。例えば、近年注目されている治療法の一つに「セルフライゲーションブラケット」があります。これは、従来のブラケットとワイヤーを細い結紮線で固定する方式とは異なり、ブラケット自体にシャッターのような構造があり、ワイヤーとの摩擦を低減することで、歯がスムーズに動きやすくなるとされています。これにより、治療初期の歯の移動が速やかになる可能性が指摘されていますが、全体の治療期間が大幅に短縮されるかどうかは、症例や他の要因にも左右されます。また、「光加速矯正装置」や「振動型加速矯正装置」といった、特殊な光や微細な振動を歯周組織に与えることで骨の代謝を活性化させ、歯の移動を促進すると謳う補助装置も存在します。これらの装置は、自宅で毎日一定時間使用することで、治療期間の短縮効果が期待できるとされていますが、その効果についてはまだ研究段階の部分もあり、全ての症例で同様の効果が得られるとは限りません。さらに、外科手術を併用する「コルチコトミー(歯槽骨皮質骨切除術)」は、歯を支える骨の表面に切れ込みを入れることで、意図的に骨の代謝を早め、歯の移動を加速させる方法です。これは確かに期間短縮効果が高いとされていますが、外科的な侵襲を伴うため、適応となるケースは限られます。重要なのは、これらの方法が「魔法のように」期間を短縮するものではなく、それぞれにメリットとデメリット、そして適応条件があるということです。自己判断で無理なスピードアップを求めるのではなく、まずは担当の歯科医師に相談し、自分の歯並びの状態やライフスタイルに合った、安全で確実な治療法を選択することが最も大切です。
矯正スピードアップの噂その効果と注意点