美しい横顔の基準の一つとしてよく知られているのが「Eライン(エステティックライン)」です。これは、顔を横から見たときに、鼻の先端と顎の先端を直線で結んだラインのことで、このラインの内側に唇が収まっているか、あるいは唇の先端がわずかにラインに触れる程度が、理想的なバランスとされています。日本人の場合、欧米人に比べて鼻が低い傾向があるため、Eラインの内側に唇が完全に収まるのは難しいとも言われますが、それでも横顔の美しさを評価する上で重要な指標の一つです。歯列矯正治療、特に前歯の突出(いわゆる出っ歯)や、上下の顎全体が前に出ている「上下顎前突」を改善する治療を行うと、このEラインに顕著な変化が現れることがあります。矯正装置によって前歯を適切な位置まで後退させることで、突出していた口元が引っ込み、Eラインの内側に唇が収まりやすくなるのです。その結果、横顔全体の印象がすっきりとし、知的で洗練された雰囲気になることが期待できます。特に、歯を並べるためのスペースが不足している場合に、小臼歯などを抜歯して矯正治療を行うと、前歯を後退させるための十分なスペースが確保できるため、口元の変化、ひいてはEラインの変化がより大きくなる傾向があります。また、下顎が後退しているためにEラインが整っていない場合でも、矯正治療や、場合によっては外科的矯正治療(顎の骨の手術を伴う治療)を併用することで、下顎の位置を前方に移動させ、Eラインを改善することも可能です。逆に、下顎が前に出ている「受け口(下顎前突)」の場合も同様に、矯正治療や外科的矯正治療によって下顎を後退させ、理想的なEラインに近づけることができます。ただし、Eラインの変化の度合いは、元々の骨格の形態、歯の傾斜角度、治療計画(抜歯の有無、歯の移動量など)によって大きく異なります。全てのケースで劇的な変化が見られるわけではありませんし、無理にEラインを追求することが必ずしも機能的・審美的に最良の結果をもたらすとは限りません。大切なのは、個々の顔立ち全体のバランスや、噛み合わせの機能性を考慮し、歯科医師と十分に相談しながら、健康的で美しい口元と横顔を目指すことです。歯列矯正がもたらすEラインの改善は、横顔の美しさを高める非常に魅力的な要素の一つと言えるでしょう。
Eラインと横顔美人歯列矯正がもたらす変化