社会人になって歯列矯正を始める際、多くの人が最も気にするのが「治療中の見た目」です。会議やプレゼン、顧客との商談など、ビジネスシーンで口元の装置が目立ってしまうのは、できるだけ避けたいと考えるのは当然のこと。幸い、現代の矯正治療には、そんな社会人のニーズに応える、目立ちにくい装置の選択肢が豊富に用意されています。それぞれの特徴を理解し、あなたに最適な装置を見つけましょう。まず、究極の審美性を追求するなら、「舌側(ぜっそく)矯正(リンガル矯正)」が第一候補となります。これは、歯の裏側にブラケットとワイヤーを装着するため、外側からは矯正していることがほとんど分かりません。人前に立つ仕事の方にとっては、非常に魅力的な選択肢ですが、舌に装置が当たって違和感や話しにくさを感じやすいことや、高度な技術を要するため費用が最も高額になるというデメリットがあります。次に、近年絶大な人気を誇るのが、インビザラインに代表される「マウスピース矯正」です。透明なマウスピースを装着するため、至近距離で見られない限り、周囲に気づかれることはほとんどありません。また、食事や重要な会議の際には、自分で取り外すことができるのも大きなメリットです。ただし、自己管理が治療結果を大きく左右するため、一日20時間以上の装着時間を守る強い意志が必要です。ワイヤー矯正の確実性と、審美性を両立させたいなら、「審美ブラケット」という選択肢があります。これは、歯の表側に装着するブラケットを、歯の色に近い白や透明のセラミックやプラスチック素材にしたものです。ワイヤーも白くコーティングされた「ホワイトワイヤー」を選べば、さらに目立ちにくくなります。従来の金属ブラケットに比べて費用は高くなりますが、舌側矯正よりは安価で、幅広い症例に対応できるのが強みです。見た目のストレス、費用、治療の確実性、そしてあなたのライフスタイル。これらの要素を総合的に考慮し、専門医とじっくり相談することが、後悔のない装置選びに繋がります。