歯列矯正リテラシー

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  • 糖尿病による神経障害が頻尿を招く仕組み

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    糖尿病による頻尿というと、多くの人が高血糖による浸透圧利尿を思い浮かべるでしょう。しかし、これは主に血糖コントロールが著しく悪い初期段階に見られる現象です。糖尿病との付き合いが長くなり、血糖コントロールが不十分な状態が続くと、また別のメカニズムによる頻尿が現れることがあります。その原因となるのが、糖尿病の三大合併症の一つである「糖尿病神経障害」です。高血糖の状態が長く続くと、血液中の過剰な糖が全身の神経細胞にダメージを与え、その働きを鈍らせてしまいます。この神経障害は、手足のしびれや感覚の麻痺を引き起こすことで知られていますが、実は内臓の働きを自動的に調節している「自律神経」にも影響を及ぼします。私たちの膀胱の機能も、この自律神経によってコントロールされています。健康な状態では、膀胱に尿が溜まるとその情報が脳に伝わり尿意を感じ、自分の意思で排尿を行います。しかし、糖尿病神経障害によって膀胱の神経がダメージを受けると、この一連のシステムに異常が生じます。具体的には、膀胱に尿が溜まっていることを感知する神経が鈍くなり、尿がかなり溜まるまで尿意を感じなくなってしまうのです。その結果、膀胱がパンパンに膨れ上がり、自分の意思とは関係なく尿が少しずつ漏れ出てしまう「溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)」という状態になることがあります。これは頻尿とは少し異なりますが、下着が常に濡れているような状態になります。一方で、逆に膀胱が過敏になってしまうケースもあります。神経のコントロールがうまくいかなくなり、少ししか尿が溜まっていなくても、脳が「尿が満タンだ」と勘違いして強い尿意を感じてしまうのです。これが「過活動膀胱」と呼ばれる状態で、頻繁にトイレに行きたくなり、時には我慢できずに漏らしてしまうこともあります。このように、糖尿病神経障害による頻尿や尿トラブルは、浸透圧利尿とは全く異なるメカニズムで発生します。血糖値を良好にコントロールし続けることが、こうした深刻な合併症を防ぐための最も重要な対策となるのです。

  • 私が糖尿病に気づいたのは夜中のトイレから

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    今思えば、体は確かにサインを送ってくれていたのだと思います。四十代も半ばを過ぎ、疲れやすくなったのは歳のせいだとばかり思い込んでいました。最初の変化は、夜中にトイレで目が覚めるようになったことでした。それまでは朝までぐっすり眠れていたのに、一晩に二度、三度と起きるのが当たり前になりました。寝不足で日中の仕事に集中できず、ぼーっとすることも増えました。妻からは「またトイレ?何か悪いんじゃないの」と心配されましたが、私自身は「水を飲みすぎただけだろう」と軽く考えていたのです。しかし、その「水を飲む量」が異常だったことに、私は気づいていませんでした。会議中も、デスクワークの最中も、とにかく喉が渇いて仕方がないのです。手元には常にペットボトルのお茶を置いていましたが、飲んでも飲んでも渇きは癒えませんでした。頻繁に席を立ってトイレに行くものですから、同僚からも不審な目で見られていたかもしれません。そんな生活が数ヶ月続いたある日、会社の健康診断の結果が届きました。そこには「血糖値に異常あり、要精密検査」という厳しい文字が並んでいたのです。さすがに無視することはできず、私は重い腰を上げて内科クリニックの門を叩きました。医師に最近の症状、特に夜間の頻尿と異常な喉の渇きについて話すと、すぐに血液検査が行われました。そして後日、告げられた診断名は「二型糖尿病」でした。頭が真っ白になりましたが、同時にこれまでの不調の理由がすべて繋がった瞬間でもありました。あの夜中のトイレは、私の体が必死に発していたSOSだったのです。医師の説明によると、高血糖によって尿量が増え、その結果として脱水状態になり喉が渇くという、典型的な糖尿病の症状でした。もっと早く異変に気づいていれば、という後悔がないわけではありません。しかし、あの不快な頻尿があったからこそ、私は病院へ行く決心をし、病気を発見することができました。今、私は食事療法と運動で血糖コントロールに励んでいます。体の小さな変化を見過ごさないこと。それが、自分の健康を守る上でいかに重要かを、私は身をもって学んだのです。