歯列矯正治療で美しい歯並びを手に入れた後、その状態を長期間維持するために非常に重要なのが「保定期間」と、そこで使用される「リテーナー(保定装置)」です。このリテーナーの装着について、「夜だけでも大丈夫なの?」という疑問を持つ方は少なくありません。結論から言うと、治療の段階や歯科医師の指示によっては、リテーナーの装着が「夜だけ」で良くなるケースは確かに存在します。しかし、それは一定の条件を満たした場合に限られます。矯正治療によって動かされた歯は、まだ周囲の骨や歯周組織が完全に安定しておらず、元の位置に戻ろうとする力が働きやすい状態にあります。これを「後戻り」と言います。この後戻りを防ぐために、リテーナーを装着して歯を新しい位置に固定し、周囲の組織が安定するのを待つのが保定期間の目的です。治療終了直後や、まだ歯並びが不安定な時期は、日中も含めてできるだけ長時間(食事や歯磨きの時以外)リテーナーを装着するように指示されるのが一般的です。この時期に装着時間が短いと、せっかく綺麗になった歯並びが再び乱れてしまうリスクが高まります。その後、歯並びが徐々に安定してくると、歯科医師の判断のもと、リテーナーの装着時間を段階的に減らしていくことがあります。例えば、日中の数時間は外しても良い、あるいは在宅時のみの装着で良い、といった指示があり、最終的には「夜間のみの装着」で維持を図るという流れになることが多いです。しかし、この「夜だけ」という指示が出るまでには、通常、数ヶ月から1年以上の期間、しっかりとリテーナーを使用して歯並びを安定させる必要があります。また、夜間のみの装着になった後も、定期的な歯科医院でのチェックは欠かせません。万が一、後戻りの兆候が見られた場合には、再度装着時間を長くするなどの対応が必要になることもあります。自己判断で「もう大丈夫だろう」と装着をやめてしまったり、装着時間を短縮したりすると、後戻りを招き、最悪の場合、再治療が必要になることもあります。リテーナーは、美しい歯並びを生涯維持するための大切なパートナーです。歯科医師の指示を必ず守り、根気強く使用を続けることが何よりも重要です。
リテーナーなら夜だけでも大丈夫?保定の重要性