近年、歯列矯正治療の選択肢として急速に人気が高まっているのが、「マウスピース型矯正装置」です。これは、従来のワイヤーとブラケットを用いた矯正とは異なり、透明な樹脂製のマウスピースを段階的に交換していくことで歯を動かす比較的新しい治療法です。代表的なものに「インビザライン」などがあります。その仕組みは、まず精密な歯型採りや口腔内スキャンを行い、現在の歯並びの状態を3Dデータ化します。そして、専用のシミュレーションソフトを用いて、治療完了までの歯の動きをミリ単位で計画し、その計画に基づいて、少しずつ形の異なる複数のマウスピースをオーダーメイドで作製します。患者さんは、歯科医師の指示に従い、通常1~2週間ごとに新しいマウスピースに自分で交換していきます。一つのマウスピースで動かせる歯の移動量はごくわずか(約0.25mm程度)ですが、これを繰り返すことで、徐々に歯が目標の位置へと移動していくのです。マウスピース型矯正装置の最大の特徴は、何と言っても「目立ちにくい」ことです。透明な素材でできているため、装着していても周囲の人に気づかれにくく、矯正治療中の見た目を気にする方にとっては非常に大きなメリットとなります。また、「取り外しが可能」であることも大きな特徴です。食事や歯磨きの際には自分で取り外すことができるため、従来のワイヤー矯正のように食べ物が装置に絡まったり、歯磨きがしにくかったりするストレスが大幅に軽減されます。さらに、金属を一切使用しないため、金属アレルギーの心配がある方でも安心して使用できます。加えて、治療開始前に3Dシミュレーションで治療後の歯並びを視覚的に確認できるクリニックも多く、治療へのモチベーション維持にも繋がります。ただし、このマウスピース型矯正装置にも適応症例があり、全ての歯並びに対応できるわけではありません。また、効果を最大限に引き出すためには、1日の装着時間を厳守する(通常20時間以上)といった自己管理が非常に重要となります。