歯列矯正治療の途中で転院する場合、患者さんにとって最も気になることの一つが「費用」の問題でしょう。転院には、現在のクリニックでの清算と、新しいクリニックでの新たな費用が発生するため、事前にしっかりと把握し、計画を立てておく必要があります。まず、現在治療を受けているクリニックでの費用清算についてです。多くの矯正歯科では、治療開始時に治療費総額を支払う「総額制」か、あるいは基本料金に加えて毎回の調整料を支払う「調整料制」を採用しています。総額制の場合、治療途中で転院すると、未経過分の治療費が返金される可能性がありますが、返金額はクリニックの規定や契約内容、治療の進捗状況によって大きく異なります。全額返金されるケースは稀で、多くの場合、既に行った治療の費用や事務手数料などが差し引かれます。契約書に返金規定が明記されているかを確認し、不明な点は必ず歯科医師やスタッフに質問しましょう。調整料制の場合は、それまでに支払った基本料金と調整料が既治療分となり、今後の調整料は発生しませんが、基本料金の一部が返金されることは少ないかもしれません。また、クリニックによっては、転院に伴う「違約金」や「資料作成費」が発生する場合もあるため、注意が必要です。次に、転院先のクリニックで発生する費用です。転院先では、基本的に新たな患者として扱われるため、初診料、精密検査料、診断料などがまずかかります。そして、現在の装置をそのまま使用できる場合もありますが、治療方針によっては装置を一部または全て交換する必要が生じ、その場合は新たな装置料が発生します。さらに、今後の治療に対する調整料や、治療終了後の保定装置料、保定期間中の観察料なども必要になります。転院先での費用は、治療の残り期間や内容によって大きく変動するため、カウンセリング時に詳細な見積もりを出してもらい、内容を十分に確認することが重要です。注意点としては、転院によって治療期間が延びた場合、その分、調整料などの費用が増える可能性があることです。また、転院前のクリニックと転院後のクリニックで、費用の二重払いが発生しないように、それぞれの支払い範囲や清算方法を明確にしておく必要があります。契約書の内容を隅々まで確認し、疑問点は必ず解消してから契約に進むようにしましょう。費用の問題はトラブルに繋がりやすいため、慎重な対応が求められます。